【症例紹介】大動脈弁狭窄症
2022/03/04/
症例
動物種:犬
品種:ヨークシャー・テリア
年齢:12歳
主訴
夕方から夜にかけて呼吸が荒いとの主訴で来院
身体検査
Levine3/6(中程度)の左室収縮期雑音を聴取
※心雑音のLevine分類について詳しくはこちら
検査
1.胸部X線検査
VHS(心拡大の指標。犬では10.5以上で心拡大を示唆する。):12.8
→心臓の拡大を認める
※心臓の大きさの指標、VHSについて詳しくはこちら
2.心臓超音波検査
収縮期に左室流出路(大動脈弁領域)に乱流が認められる
→大動脈弁領域の狭窄を示唆する
LA/AO(左房径大動脈径比。左心房拡大の指標。1.6以上で左心房の拡大が示唆される):1.37→左心房の拡大なし
FS(左室内径短縮率。心臓の収縮機能や、心臓にかかっている負荷をみる指標。健常犬では35~45%。):47.7%
LVSd(心室中隔拡張末期壁厚):11.25mm
LVPwd(左室自由壁拡張末期壁厚):9.27mm
→心筋壁の肥厚を認める
診断
大動脈狭窄症(AS)及びそれに伴う心筋肥大
治療
カルベジロールの投与を開始。低用量から開始し、徐々に用量を増量した。
(カルベジロール=交感神経α受容体、β受容体遮断薬:血管を広げる作用と、心拍をおさえ心臓を休ませる作用がある。心拍数や血圧を調整することで、循環を改善する。)
治療経過
≪1か月後≫
心臓超音波検査
収縮期の左室流出路(大動脈弁領域)の乱流に改善が認められる
LVSd(心室中隔拡張末期壁厚):前回11.25mm→8.22mm
LVPwd(左室自由壁拡張末期壁厚):前回9.27mm→8.99mm
→心筋壁肥厚の改善を認める
評価
経過良好の為、同様の内服を継続することとした
先生から一言
大動脈弁狭窄症は、以前は大型犬での発生が多いと言われていましたが、小型犬の飼育頭数が多い近年では、小型犬でも見つかることが多くなっています。
本症例は、内服による内科的管理を行うことで心筋肥大の改善が認められました。また、もともと腎数値が高かったのですが、血液の循環が良くなることで血液検査上の腎数値なども改善しました。
高齢の小型犬で多くみられる僧帽弁閉鎖不全症と、大動脈弁狭窄症のようなその他の心疾患の鑑別は、心臓超音波検査で行います。
上記2つの疾患の、聴診上の心雑音聴取部位や聞こえ方は、厳密には違うのですが、小型犬では僧房弁領域と大動脈弁領域が近く、聴診のみでの鑑別は難しいことが多いです。
超音波検査をせずに心臓薬を選んでしまうと、全く違う病態の子に、必要がない、もしくは症状を悪化させてしまいかねないお薬を選んでしまう可能性があります。
心雑音が認められた場合は、胸部X線検査や心臓超音波検査等を行い、適切なお薬を飲ませてあげることで、生活の質を長く保つことができると考えられます。
当院では隔週で循環器診療を行っております。
気になる症状がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
足立区東和にある亀有東和動物病院。
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